いまむさん | 短編小説

うまく言葉に出来ない、心情を短い文章にまとめていけたらと思います。

友達のいない彼 | 3分短編小説

彼には、妻と5歳の息子がいます。彼にとって、とても大事な家族です。
ただ、彼には仲の良い友達がいません。

彼は、小学生の頃と中学生の頃、ひどいいじめに会いました。体中が青くなっていました。殴られ、叩かれ青血となって腫れていました。

いじめた子が笑いながらこちらを見ている目を、よく覚えています。それ以上に、周りで見て見ぬふりをする同級生の表情やこちらを見る目も、よく覚えています。

誰も助けてはくれません。先生や大人達は、大人達の世界を生きるに忙しいので、子供の世界を理解する事はありません。

かといって、彼はいじめた子や、周りで見ていた子を恨んでいる事もありません。過去の事ですし、いじめはどこでもあります。

いじめられながら、相手が何を考えているか、周りが何を考えているかを、よく観察する様になりました。少しでも、殴られる回数を減らしたかったのかもしれません。

彼は、いじめられた時に、そのいじめに勝てなかったのだから、いじめられたのだと考える様にしています。ただ、そういった経験からあまり、人と深く関わる事は避けてきました。なので、仲の良い友達という存在が、彼にはいません。

そんな彼も、高校からはいじめられる事は幸運にも無かったのですが、深い人間関係を持つ事を心のどこかで避けていました。その方が、彼にとって楽な人間関係だったのです。

彼が社会人になり、今では真面目に会社で働き、とても気の回る頭の良い人で、会社内の評判はとても良いです。彼は、仕事を一生懸命にこなしますが、歳を重ねて、もし幼い頃からの親友がいて、そういった仲間と一緒にお酒でも飲み交わせたら、どんなに素敵なんだろうと考える事が多くなりました。

ただ、考える度に、なぜか涙が出そうになります。

日曜日に、彼は近所の公園で、5歳の息子とサッカーをしていました。彼は息子に、「パパー!ちゃんとボールとってよーと言われています」。

彼は、サッカーをしながら、自分には一番の親友が目の前にいるじゃないかと、ボールを彼の親友に向かって蹴りながら、何気ない休日がとても素敵な1日と感じる事が出来ました。



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